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What We Did on Our Holidays

What We Did on Our Holidays

39■She Moves Through The Fair / Fairport Convention
いつまでもトラッド苦手とも言ってられない気もしますが、初めて買ったフェアポートのアルバムは、「Unhalfbricking」とこの「What We Did On Our Hplidays」です。大学時代、買い付けと称して出かけた東京でですが、確か別々の店です。それまでフェアポートを聞いたことなかったので不安もあったのですが、フォークロックっぽい事を信じて購入。両方とも英盤ですが、「What〜」は南青山のパイド・パイパーだった覚えです。
UNHALF BRICKING

UNHALF BRICKING

サンディー・デニーの寒空に突き刺さるような歌声は、今は大好きですが、その当時(80's半ば)は、さほど感心はしなかった覚えもあります。ディランの未発表曲の入った「Unhalf〜」('69)の方が、ジャケットの英国らしさを含め出来はいいです。がその前作になる「What〜」には、まだイアン・マシューズ(vo)が正式なメンバーでいました。このときのラインナップは、リチャード・トンプソン(g,vo)、サイモン・ニコル(g)、アシュレー・ハッチングス(b)、マーティン・ランブル(ds)、サンディー・デニー(vo)、マシューズの6人で、Polydorから出たデビュー作でvoを取っていたジュディ・ダイブル*1に代わって、ストローブスからデニーが参加し、レーベルもIslandに移籍しての1枚です。
よく言われるように、そもそも米西海岸のフォークロックのコピーから始まり、次第にオリジナル曲を作るようになった彼らが、エレクトリック・トラッドと言われるトラディショナル・フォークにロック化したものでそのスタイルを確立するまでの過度期の作品です。カヴァー曲はジョニ・ミッチェルとディランの2曲(ディランの"I'll Keep It With Mine"もなかなか印象的です)にトラッド1曲で、あとはオリジナルです。しかもそれぞれのメンバーが持ち寄った作品が並びヴァラエティに富んでいます。ハッチングスが書いた"Mr.Lacey"はストレートなブルーズですし、デニーの後のバンド名にもなった"Fotheringay"は清楚な美しさに満ちています。"Book Song"ではマシューズとデニーのvoが聞かれます。
唯一のトラッドとなった"She Moves Through The Fair"は、次作の"Sailor's Life"のような大作ではないですが、デニーの力強い歌声に思わず引き込まれます。
アイリッシュ・バラッドと紹介されていることも多いこの曲は、多くのカヴァーがあります。

当時19歳のアン・ブリッグスが歌った63年のヴァージョン。

こちらはメアリー・ブラック。
トラッドとはこうしてアカペラで歌われるのが基本形のようで、これにエレクトリックなバックをつけたフェアポートのスタイルは当時ずいぶん新しかったのでしょう。

*1:後にトレイダーホーンを結成する人ですが、初期キング・クリムゾンとのつながりもあります