young#3

197■Wild Heart Of The Young / Karla Bonoff
カーラ・ボノフの3枚目は「Wild Heart Of The Young」(若い頃の一途な情熱、という意味でしょうか)で82年というAORというジャンルが全盛のころにリリースされました。いわば満を持しての真打の登場、といった感じでCBSソニーは送り出した気がします。当然ながら日本では大ヒットしましたが、アメリカでも初めてトップ20入りするヒット曲"Personally"(NYのsswポール・ケリーの作品)が生まれました*1。ブリンドル時代の友人、ケニー・エドワーズのプロデュースでラス・カンケル(ds)、ボブ・グロウブ(b)、ダニー・コーチマー(g)、ビル・ペイン(kb)、ワディ・ワクテル(g)、アンドリュー・ゴールド(g,kb)、JDサウザー(vo)らおなじみの面々(ある意味スリルのない選択ではありますが)による手堅い演奏によるラヴソングが並んでいます。いわゆるメロウ・グルーヴといわれるAORにありがちなオーヴァーなkbのarrは、少なくバラードが多すぎるきらいはありますが、よく練られています。
このタイトル曲は基本的に弾き語りのバラードで、若い頃の一途な恋への反省と後悔が語られますが"Oh if I'd only known it then"というフレーズが耳に残ります。
このアルバムは地味と言われようが、こういったミディアム〜スローなナンバーに円熟味が感じられ、"Just Walk Away"、"Dream"といったナンバーも人気です。当時再び長い休暇に入っていたイーグルスジョー・ウォルシュが"It Just Takes One"で印象的なルーズなスライドを聞かせています。これは何でも二人で決めてきたけど、さよならは私一人で言える、という恋への決別を歌った歌ですが、"It just takes one to say goodbye"と繰り返されるリフレインが最後のヴァースで"It just took one〜"と過去形になっているあたりにも注目したいです。
CDはどうか知りませんが日本盤LPには、吉田弘なる人の「なんとなくクリスタル」以降目立った短編風エッセイが付いていて、これが見事に中身がない。当時の(今もか)AOR文化の有り様をしのばせます。それにしても「麗しの女」という邦題をつけた担当者死んでいい。

*1:それまでの2作はアルバムはトップ100入りはしていますが、ヒットと呼ばれるほどのセールスは記録していません。日本では露出が多いのでそう錯覚があるのと、何も知らない(調べない)ライターのいい加減な記述が独り歩きしています