昔は「追い風」と言いました

ダウンウインド(紙ジャケット仕様)

ダウンウインド(紙ジャケット仕様)

■Downwind:Pierre Moerlen's Gong
ピエール・ムーラン(昔はモエルランと言っていた)ズ・ゴングの79年作「Downwind」は、当時フォノグラムから出た日本盤の邦題を「追い風」(名義はゴングとしてリリース)といいます。VirginからAristaに移籍してリリースされたもので、「Gazeuse」あたりからパーカッシヴなジャズ・ロックを展開していたゴングの主導権は、その頃からムーレンに移っていてここでは彼一人がジャケットでポーズを取ります。日本盤CDのライナーにある、当時のAristaのクロスオーヴァーフュージョンに力を入れた方針と、ムーレンの方向性が一致した、というのは、新鮮な見解でした。ムーレンが歌う(更にkbを弾く)2曲(うち"What You Know"はミック・テイラーがgで参加)は別として基本的には、パーカッシヴなジャズ・ロックなれど、前作では3人いたパーカッション軍団のうちミレイユ・ボーエルが脱退して、弟のブノア(vb)、ハンスフォード・ロウ(b)、ロス・レコード(g)、フランソワーズ・コウス(perc)にピエール(ds、marimba、vb、kb、vo)の5人体制となっています。
kb/syn類の導入によりpec乱れうちと言った感じがあった前作の自然美から人工美に移った感じがあります。ここでの目玉はマイク・オールドフィールド(g)が参加したタイトル曲"Downwind"で、まだ大作主義だったオールドフィールドの作風にエキゾティックなオリエンタリズムが乗っかったムーレンズ・ゴングならではの味わい。ゴング時代の盟友、ディディエ・マラーブ(sax)、隠遁中だったスティーヴ・ウィンウッド(syn)、マイクの弟、テリー(fl)も参加しています。前作「Expresso2」から参加のハンスフォード・ロウ(b)のファンク的なbassプレイも結構派手目です。リリース時にも言われたことですが、オールドフィールドの「Tubullar Bells」っぽいムードもあります。
地味ですがもう1曲目玉があります。strings-syntheとディディエ・ロックウッド(vn)とブノアのvbが甘美な世界を醸し出す"Emotions"で、79年という時代柄、こういうsynの使い方は避けられなかったのですが、やや惜しい。

このアルバムでは一応バンド形式の形をとっていましたが、次の「Time Is The Key」('80)では、完全にムーランのソロに近く、安易なダンスミュージックあり、めくるめくvbのメロディアスな世界と様々です。リリースの順番は逆になりましたが「Downwind」リリース後のライヴ盤が「Live」('81)で、"Dowinwind"ではオールドフィールドも参加しています。

タイム・イズ・ザ・キー(紙ジャケット仕様)

タイム・イズ・ザ・キー(紙ジャケット仕様)

ライヴ(紙ジャケット仕様)

ライヴ(紙ジャケット仕様)