クローサー・トゥ・イット(紙ジャケット仕様)

クローサー・トゥ・イット(紙ジャケット仕様)

■Closer To It:Brian Auger's Oblivion Express
ブライアン・オーガーが70's半ばに結成したオブリヴィオン・エキスプレスの活動は、英国人ミュージシャンでありながらいわゆる英国ロックとはかなり遠い距離にあります。70年にリリースされたデビュー作「Oblivion Express」ではジム・ミューレン(g〜後にヴェネガー・ジョー)、ロビー・マッキントッシュ(ds〜後にAWB)、バリー・ディーン(b)にオーガーというラインナップで、この頃はまだジャズロック〜オルガンロックなニュアンスが強いです。アレックス・リガーウッド(vo〜後にサンタナ)が加わったのは3枚目の「Second Wind」ですが、ミューレンとマッキントッシュが抜け、オーガー=ディーン=ジャック・ミルズ(g)、レノックス・ラントン(perc)、ゴドフリー・マクリーン(ds)による本作「Closer To It」(RCA)では、黒人音楽の取り込み方もスムーズで、それまでのブルーズ依存の白人ロックではなく、ノーザン・ソウルを消化した白人ロックの完成形として、当時はロックファンには無視されていましたが、90'sに入ってレア・グル―ヴ/フリー・ソウルのブームによって再評価されました。
マーヴィン・ゲイのカヴァー"Inner City Blues"を始めとても耳触りのいいサウンドは、クロスオーヴァーのブーム直前のこの時期(73年)だったからなしえたものでしょう。ジェフ・ベックの「Blow By Blow」よりも早い、クロスオーヴァー・ロックの傑作です。ブラジルっぽいニュアンスもある"Voices Of Other Times"も名曲。