ユーライア・ヒープ

現在まで活動を続けるヴェテラン・バンドのユーライア・ヒープですが、やはり全盛期となると70'sになります。ハーモニーを生かした曲があったり、ブラック・サバスやブラック・ウィドウ程ではないにせよオカルト色をだしたり、プログレ的なコンセプトを打ち出したり、としながら基本線はハードロックです。メンバー・チェンジの激しさもバンドの特色の一つです。
70'sのオリジナル・アルバムは枚。デイヴィッド・バイロン(vo)、ミック・ボックス(g)、ポール・ニュートン(b)、アレックス・ネピア(ds)、ケン・ヘンズレー(kb.g,vo)の5人がスタート時のメンバー。バンド名はディケンズの「デヴィッド・カッパフィールド」の登場人物から取られています。
1・Very 'Eavy Very 'Umble('70)

Very Eavy Very Umble

Very Eavy Very Umble

強烈なorganをフィーチャーしたハードロック"Gypsy"が印象的なデビュー作。ホラーなジャケットも含めすでに確固とした色を出しています。prodは彼らを見出したゲリー・ブロンでVertigoからのリリース。

2・Sailsbery('71)
dsがベーカールーのキース・ベーカーに代わってのセカンド。ジャズ・ロック的な長尺の曲もある一方、"The Park"のような叙情的な曲が、ハードロック・ファンのツボを刺激するのですが、僕は逆に引いてしまうのです。ここからブロンが設立したBronzeからのリリース。

3・Look At Yourself('71)
三度dsが代わり(ネピアの後ナイジェル・オルソンに交代)元クレシダのイアン・クラークが参加してリリースされた初期の傑作。「対自」という当時流行の哲学用語に「核」をくっつけた造語による邦題は、今もって意味不明ですが、このタイトル曲のわかりやすいハードロックはある種痛快でもあります。71年と言うとディープ・パープルはまだ「Machine Head」をモノにしていませんが、ちょうど2期パープルの典型的なorganサウンドをヘンズレーは構築。これにハードロックバンドらしからぬコーラスをダビングし、バイロンのハイトーンのvoと合わせて効果を出しています。このアルバムにはもう一つ"July Morning"*1という泣きの曲もあって、まさに日本人向けでした。


4・Demons & Wizards('72)
Demons & Wizards (Dlx)

Demons & Wizards (Dlx)

前作の成功を受けオカルティックなテーマを取り上げた意欲作。アコースティックな作風をハードロックに融合させています。前作の後ニュートンに代わり元コロシアムのマーク・クラークが参加しましたがレコーディング時には元キーフ・ハートレー・バンドのゲイリー・セイン(b)に代わっています。dsは5代目リー・カースレイク(元ナショナル・ヘッド・バンド)。

"The Wizard"は名曲です。
5・The Magician's Birthday('73)
ロジャー・ディーンのジャケットもコンセプトも前作と同じ。異色のハイトーンのコーラス、ブルーズ色希薄なサウンドは、僕のイメージするハードロックとは少し違って作られたイメージがあります。それはともかく"Sweet Lorraine"は、コーラスにも一瞬聞こえるケン・ヘンズレーのsynのイントロがインパクトあります。シングル向けに作られただけあってキャッチーな魅力があります。

但し他の曲はどれもつまらない
6・Live('73)
ロックンロール・メドレーというのはゼッペリンを意識したのでしょうか?
7・Sweet Freedom('73)
8・Wonderworld('74)
「Live」で一区切りつけたバンドが、オカルト色を払しょくしアメリカ市場を視野に入れた2枚ですが、日本では「終わった」という評価。但し英米ではそこそこのチャート・リアクションを残してるので、思われてるほどひどくないのかも。

"Stealin'"は「Sweet Freedom」より。確かにそんなに悪くない。74年にセインが感電事故死し、後任にクリムゾンからジョン・ウェットン(b,vo)が参加します
9・Return To Fantasy('75)
ウェットンの加入で劇的に変化したわけではないですが、タイトル通り初期の路線に戻ったように見える1枚。英国では最大のヒットとなりヒープ復活となりました。

10・High And Mighty('76)
但しこのムードは1作限りで再びアメリカナイズされた音に戻ります。同時期のパープル同様、過去と同じ路線ではやっていけない事がありありとわかります。結局ウェットンは「金の為」と割り切った活動を飽きたと言って辞め、ボックス、ヘンズレーがバイロンを解雇するという形でバンドは新たなシンガーを捜すことになります。
11・Firefly('77)
ルシファーズ・フレンドからジョン・ロートン(vo)、スパイダー・フロム・マースからトレヴァー・ボルダー(b)を加え新たなスタートを切ったヒープの力作。ハードロック不遇の時代にあって、一部のマニア向けにはなっていません。タイトル曲はメロディアスな名曲。

12・Innocent Victims('78)
Innocent Victim

Innocent Victim

個人的には懐かしい1枚。再びアメリカナイズな路線に戻りつつ、ヘンズレー主導でドラマティックな展開を見せます。特に"Choices"は時代遅れとなったハードロックのバラードらしい。

"Keep On Ridin'"、"Flyin' High"などウエストコースト風を狙ったものもあります。
13・Fallen Angel('79)
ジャケットには初期のファンタジー路線にもどった様な醜悪なイラストですが、アメリカナイズされたポップ・ロックとジャケットはかなり落差があります。孤軍奮闘するのはロートンですが、結局次作「Conquest」('80)のレコーディング時に脱退してジョン・スローマンと交代します。

別のバンドと考えれば悪くはないですけど…

*1:因幡晃というsswの"わかってください"という曲はもろコピーでした