10048◆◆大殺陣('64日本)


監督:工藤栄一
出演:里見浩太郎、大友柳太郎、宗方奈美、平幹二郎大坂志郎、山本麟一、河原崎長一郎

延宝6年(1678年)、4代将軍・家綱の治世。大老酒井忠清は家綱の弟である甲府宰相・綱重を後継として擁立し、天下を我が物にしようと企む。しかし、それを阻もうと軍学者山鹿素行は一党を組織し、綱重の暗殺を計画する。
妻・加代と幸せに暮らしていた書院番・神保平四郎は友人・中島外記をかくまったことから謀反を企む一味と見なされ捕縛される。 何とか逃げ出した平四郎は偶然出会った旗本・浅利又之進の屋敷にかくまわれる。 加代の安否を確認しようと出かけた平四郎に山鹿素行の姪・みやが近づく。 加代が斬り殺されたことを知り、復讐しようとする平四郎をみやは必死に止める。 そして、下っ端の役人を斬ったところで何も変わらない、巨悪を倒さなくてはならないと諭し、仲間の星野友之丞の家に平四郎を連れて行く。 星野と話をするうちに、平四郎も仲間に加わることを決める。
山鹿素行が仲間を集め、暗殺計画を伝える。 刺客は平四郎の他に星野、日下仙之助、別所隼人、渡海八兵衛、助七のみである。 倒すべき相手は酒井だが、警護の厚い酒井を討つのではなく、酒井の計略の要となる綱重を暗殺する方が効果的であり、 酒井も自分ではなく綱重が狙われているとは思っていないため、その隙を狙うというのが素行の計画であった。
決行当日、平四郎らは綱重の一行を計画通りに吉原の門内におびき寄せることに成功する。しかし肝心のところで臆した渡海の裏切りにより計画は失敗。 平四郎ら刺客たちは綱重を討つことが出来ないまま死ぬ。
九死に一生を得た綱重を、素行らの計画に気付いた酒井と腹心の部下である大目付北条氏長が見舞いに訪れる。 笑いながらその場を立ち去ろうとする一行の姿と、無惨に殺された平四郎の姿を見た浅利は怒りに震え、衝動的に綱重に斬り掛かる。 突然のことに慌てふためく一行を相手に、浅利は綱重と氏長を討ち果たすが、多勢に無勢、あえなく斬り殺される。
その様子を素行は複雑な思いで遠巻きに見つめていた。 一方、自らの計略の要である綱重を失った酒井は狂ったように綱重は死んでいないと叫び続ける。

工藤栄一監督による「集団抗争時代劇」の1本。「十三人の刺客」('63)の興行的成功によって再び作られたものですが、そちらが綿密な計画に基づいたものに対し、本作は裏切りあり、無計画な襲撃で、一層のリアリティがあります。手持ちカメラによる移動撮影が採用され、逃げ惑う侍、町民たちや、大人数を相手に修羅場を駆け回る刺客たちの姿をダイナミックに捉えています。
ショッキングなのは暗殺決行の前夜、久々のごちそうの後、累が及ばぬようにと妻子に手をかける貧乏御家人大坂志郎です。