日本シリーズへ

◆セ・クライマックスシリーズ ファイナルステージ第5戦(6試合制)中日2―1ヤクルト(6日・ナゴヤドーム
グラウンドをじっと見つめていた吉見の表情がようやくほぐれた。試合終了を見届けると、ベンチでハイタッチを繰り返した。今シリーズ2勝目でMVPを獲得。「1人で取れるものではない。打ってくれて守ってくれた」とエース右腕はチームメートに感謝の言葉を並べた。

 負けられない。気持ちだけがプロ入り初の中3日の体を支えていた。「後がないつもりでいったのが良かった。相手が館山さんだったので負けたくなかった」。ヤクルト先発が09年に最多勝を分け合ったライバルだったことも力をくれた。この日の先発を告げられたのは前夜(5日)の試合後に家に帰宅してから。「ネルソンがああいうこと(風邪で登録抹消)になって中3日もあると思って調整していた。(ネルソン離脱は)何しとんねんと思いましたが」

 その言葉に偽りはなかった。精密機械のような制球力で4回までパーフェクトに封じると、唯一得点圏に走者を背負った6回2死二塁では代打・福地を内角直球で遊飛に仕留めた。「就任してからこんなにいい投球を見るのは初めて。今までやったことのない中3日で、俺の見た中で最高のピッチングをした」と落合監督を完全に脱帽させた魂の98球。8回3安打無失点で救援陣にマウンドを託した。

 08年第1Sから無傷の5連勝の“CS男”も日本シリーズでは未勝利だ。昨年は右肘に不安を抱えたまま2試合に先発したが、ともに早々と降板し計7イニングで6失点。上り調子で迎える今季は“忘れ物”を取りにいく絶好の機会だ。「相手は違うけど、僕もチームもやり返したいと思っている」。エース右腕がリベンジを果たした先に落合竜の日本一が待っている。