f:ドン・フェルダー(Don Felder)
ギタリスト、1947年アメリカ、フロリダ州出身。
74年にイーグルスに参加。ジョー・ウォルシュと共に後期のバンドのカラーを染めた、ハードなギターワークでバンドサウンドに大きく貢献した人。
地元フロリダで数々のバンドを経験、マンディ・クインテットでは、後にジャクソン・ブラウン・バンドのデヴィッド・メイスン(kb)、そして当地に引越していたバーニー・リードン(g)も参加していたという。CTIというジャズ系のレーベルにフロウのメンバーとして唯一のLPを残す(’70)。日本でもCD化されたことがあるフロウだが、モノクロのジャケットにイメージされるクールな音。もちろんイーグルスを期待すると大いにコケる。
友人リードンを頼ってLAにやってきたフェルダーは、ssw、デヴィッド・ブルーや、クロスビー&ナッシュのツアー・バンドを経て、74年イーグルスのレコーディングに助っ人として参加。”Already Gone”でのリードギター、”Good Day In Hell”でのスライドという2曲の参加だったが(とりわけ後者のプレイは、何度聞いてもふるえが来る素晴らしいもの)、そのまま5人目のイーグルとして留まる。
75年の4枚目「One Of These Nights」でも、フェルダーの存在感は増し、鋭いフレーズを切り込ませ、曲にメリハリをつけるのに貢献。タイトル曲や、”After The Thrill Is Gone”での印象的なソロが光る。また初めて「歌った」”Visions”は、歌よりもgのフレーズの方が印象に残るものの、ソングライターとしても器用なところをみせる(”Too Many Hands”もランディ・マイズナーとの共作)。
そして「Hotel California」では、もはや伝説となったタイトル曲でのギター・バトル(相手はジョー・ウォルシュ)がある種の様式美をかもし出す(イントロでの12弦も美しい)。ここでも共作者としてクレジットされているが、後年のトラブルの火種はこのあたりにあった。
94年に再結成して大成功を収めたイーグルスが(というよりも、グレン・フライとドン・ヘンリーの設立した「Eagles Ltd」という会社が)、フェルダーを解雇したと発表した時のショックは大きかった。理由は、フェルダーが、バンドにおける自身の権利が正当でないと発したことによるらしいが、これを不服としたフェルダーが訴訟を起こし、裁判に及んでいる(判決結果は不明)。かつて、ザ・バンドのメンバーが、作曲クレジットをめぐって、もめたことがあったが、あれに近いものがある。
昨年来日して話題となった現在のイーグルスは、名前こそ、そう名乗っているが、実質はフライ&ヘンリーwithウォルシュ+シュミットという形態をとっているので、フェルダーのgあってこそのイーグルスに価値を見出す、僕の様な偏屈者には、あまり魅力を感じないシロモノだったことも事実だ。
イーグルスのギタリスト以上に70'sのLAを代表するセッション・マンとしての顔も合った。数は決して多くないが代表的な名演を挙げよう。
- 「The Great Pretender」:Michael Dinner(’74)
ファンタシーに2枚のLPがあるsswの1枚目。ジョン・ボイランがprodということもあって、一時期のアサイラムっぽい音。カントリーロックファン必聴!未CD化。フェルダーは、”Tattoo Man From Chelsae”でドライヴするスライドを聞かせる。
- 「A Rumor In His Own Time」:Jeffrey Comanor(’76)
これもボイランがprodした、ウエストコースト色濃い1枚。フェルダーは”Running Back Home To You”で必殺のgを聞かせる。他にもジョー・ウォルシュがソロを取る”Wishing For Saturday Night”や、ドン・ヘンリーがコーラスで加わった”Richmond”など名曲多し。日本盤CDあり。
- 「Grenda Griffiths」(’77)
ドン・ヘンリーとシャイロウ時代の仲間、ジム・エド・ノーマンがprodを手がけた、カントリーロック的新人女性シンガー。レーベルがアリオラだったことから大して注目されずに終わったのが残念(同じようなプロダクションで同時期にデビューした、ヴァレリー・カーターの方がソウルフルということもあった)。ジェシ・ウィンチェスター作の”Isn’t That So”では、フェルダーのイーグリーなソロが聞ける。これも未CD化の1枚。
- 「You Can't Argue With A Sick Mind」:Joe Walsh(’76)
「DKRC」という公開音楽番組でのライヴ。バックはジェイ・ファーガソン(kb)、ジョー・ヴァイターリ(ds,kb,fl)、アンディ・ニューマーク(ds)、ウィリー・ウィークス(b)ら豪華ラインナップ。フェルダーはサイドギターとしての参加ながら、"Rocky Mountain Way”ではリードパートを分け合うなどアピール。ウォルシュがイーグルス参加前なので、ひょっとしたらフェルダーとの息の確認作業だったのかもしれない。
フェルダーのソロとしては1枚「Air Borne」があるが、これは80’sのアメリカのメインストリームだった、大味なロックで繊細さに大いに欠ける。歌よりもイーグリーなgのフレーズがいくつか耳に残る程度。