このスティール・ギターを聞け! 後編

10)For A Dancer:Prelude
ジャクソン・ブラウンのナンバーをカヴァーしたこのカントリー・ロックを聞く限りでは、プレリュードが英国のグループとはなかなか信じ難いです。ブライアンとアイリーンのヒューム夫妻(兄妹?)とイアン・ヴァーディによるヴォーカルグループで演奏には一切タッチしていない。これは75年の「Owl Creak Incident」(タイトルはビアスの短編からでしょうか?)から。ロジャー・レッティグという人がスティールを弾く。


11)少年の木造ランプ:マザー・グース
金沢から登場した女性トリオ。70's半ばに東芝のエキスプレスに2枚のLPを残しているが、デビュー作「インディアン・サマー」はなかなかの出来(これを聞いて感銘を受けたユーミンが2枚目のジャケットを描く)。バックは吉川忠英ラスト・ショーで、村上律のゆったりとしたスティールをフィーチャー。ちなみにメンバーの1人は、セレクト仲間のご友人とか。


12)City Boys:B.J.Thomas
チップス・モーマンがprodしたナッシュヴィル録音の「Reunion」(’75)から。「Songs」、「Billy Joe Thomas」といった作品に比べるとやや弱いが、佳曲多し。ここではナッシュヴィルという事で、おなじみのピート・ドレイクがスティールを弾く。
心にひびく愛の歌


13)Post World War Ⅱ Blues:Al Stewart
アル・スチュワートがアメリカでの成功の、ささやかな足がかりを付けた1枚が、73年の「Past,Present,Future」。英国録音で翳りのある、湿ったフォークロック中心ですが、ディランの”戦後ブルーズ”に引っ掛けたこの曲では、B.J.コールのパキパキ言うスティールが心地いいです。歌詞には、「バディ・ホリーの死んだ日」(ドン・マクリーンの”アメリカン・パイ”を思い出さない人はいないでしょう)とか「ジミヘンはラウドに弾きまくった」とか「SGTペッパーは、僕にはリアルに感じた」とかそういう歌詞がおもしろい。


14)Cry,Sing,Laugh:Jim Pulte
サウス・ウインドというローカルグループでムーン・マーティン(”想い出のサマーナイト”)と一緒にやってた人。UAに2枚のソロがあって、ジェシエド・デイヴィスがprodした「Out The Window」(’72)は、LA産のスワンプロックとして一部で評価された事もありました。この曲はバディ・エモンズの枯れたスティールの入った、哀愁のカントリー・ロック。ポール・シーベルなんかにも通じる寂しげな感じです。


15)Brass Buttons:Poco
いわずと知れたグラム・パーソンズの「Grievous Angel」に入ってたもののカヴァー。リッチー・フューレーが最後に加わった「Crazy Eyes」(’73)から。ラスティ・ヤングのスティールは息が止まるくらい美しげな旋律です。ちょうどイーグルスの”マイ・マン”に当たるようなグラム追悼の意味合いもあるようです。
Crazy Eyes


16)Old Angel Midnight:Cooper Brothers
カナダ出身で南部のキャプリコーンと契約したバンドといえば、ザ・バンドのクローンとも言える、ブルー・ジャグが有名だけど、このクーパー兄弟もそう。78年に出た「Dream Nver Die」は、まっすぐなカントリーロックで、時期的には結構時代遅れ的にとらえられてたのかも。コーラスの付け方などは、イーグルスやポコなどウエストコーストのバンドからの影響も大きいのです。スティールはテリー・キングで、この曲は彼の歌声をフィーチャーしたもの。


17)さよなら夏のリセ:河合その子
80’sに入ってスティールの調べを聞く事は非常に稀になりましたが、アイドルのアルバム曲では、ちらほらと聞けます。おニャン子クラブから一足早くソロになった、河合その子のファースト「その子」からのこの曲(フレンチというコンセプトのアイドルだったため、当時「Olive」誌あたりで流行ってたリセエンヌというモチーフが持ち込まれた)では、パラシュートの今剛がスティールを弾いてます。凡庸なシンセにかき消されてしまうのがいかにも残念。ちなみに同名の映画もありましたが関係なし。