Marching In The Rain / Instant Cytron

CHANGE THIS WORLD
雨の歌#14
インスタント・シトロンは片岡知子(vo、kb、programing)と長瀬五郎(g、vo、programing)のユニットで、音楽を一言で言うのは難しい。テクノ風でもあり、ギターポップ的な部分もあり、トッド・ラングレン的な宅録ポップ的な味わいもある。何と言っても片岡のウィスパー・ヴォイスが魅力。この種のジャンルだとカヒミ・カリィという人がいるけど、個人的にははかなげな感じ(これを出すのがうまいのは、クロディーヌ・ロンジェ)だけでなく、妙な男気を感じさせる片岡に軍配をあげる。
95年の初のフルアルバム「Change This World」は、初めてシトロンと出会った1枚で、あれは駿河台のレンタル屋、ジャニスだった。最初と最後がつながったコンセプト・アルバムで子供たちのコーラスが可愛らしいタイトル曲、固めのgがカッティングしまくる”Still Be Shine”もいいが、スウィングしたMarching In The Rainも素敵。あまりのウィスパーぶりに歌詞が聞き取りにくいのが難点。ラストの”Why Do Fools Fallin’Love”につながるあたりは、カート・ベッチャーの最初のソロにあった曲へのオマージュだろう。
その後レーベルが倒産して消息が途絶えてたシトロンは、今世紀に入ってドリームズヴィルに移籍し現在も活動中。

ネットを検索してたら長瀬のこんな言葉を発見、引用します。

僕らは非常にマニアックにとられがちですが(実際無謀なくらいそうかもしれませんが)このアルバムは実家のいとこのおばさんに聴かせてもいいように作りました。それはある意味今までむちゃくちゃやってきた恩返しです(僕の話しですよ)。「おかあさん。君のカーペンターズのレコードはこんなにも僕に影響を与えたんだよ」っていう「初めておかあさんに聴かせる自分のレコード」でもあります。(どうですかお母さん。若い頃思い出しましたか?)