アル・クーパー

■Act Like Nothing's Wrong / Al Kooper
Act Like Nothing
アル・クーパー本人と夫人の首をすげかえたヌードという衝撃のジャケットから「倒錯の世界」という邦題が当時ついていた、76年作。CBSを離れ、Libertyと契約してのものだけど、玄人ウケはしても、セールス的には失敗。もはやそういう時代ではなかったのだ。よく言われるように、アル・クーパーは日本が突出した人気を誇る(本人もそれは自覚してるようだ)のは、"Jolie"に代表されるような泣きのメロディが日本人の琴線に触れるのだろう。もちろんそれだけではなく、決してうまくはないが味のあるvo、ジャンルを超えた豊富な音楽的知識とそれを隠し味として生かすarrの才能など、魅力は多い。このアルバムは、ソウル風(ハイサウンドのパロディみたいな曲もある)やらカントリー・ロックやら南部風やら、クーパーが影響を受けてきた音楽の自信を持った焼き直しの感じもあって、ピチカート・ファイヴやスタイル・カウンシルの音楽に目くじらを立てるようなファンは、きっと好みではないだろう。アル・グリーン風の"She Don't Ever Lose Her Groove"や"Missing You"のゴキゲンな感じは、クラブ世代にはOKだろう。後者はジョージ・ペリー(b)、タビー・ジーグラー(ds)ら当時のスティルス・バンドのメンバーが参加している。リトル・フィート風の"In My Own Sweet Way"では、スティーヴ・ギブソンがローウェルばりのスライドを聞かせる。ジョー・ウォルシュがスライドを弾く"Hollywood Vampire"では、ご丁寧にもウォルシュの"Turn To Stone"のフレーズを盛り込んだイントロをつけるというサービスぶり。こういうところがにくめないのだ。