#2〜Love Has No Pride

2回目の今日は女性シンガーを中心に歌い継がれるあの名曲を。
エリック・カズとリビー・タイタスの共作になる”Love Has No Pride”が、初お目見えしたのは、ボニー・レイットの2枚目「Give It Up」('72)。日本では「ボニー・レイット登場」としてリリースされたウッドストックサウンドの名盤。ここのラストでしっとりと歌われるが、ボニーのあまりうまくない歌声ゆえにリアルに感じてしまうのだ。エリック・カズは元ブルーズ・マグースのsswで、ボニーのこのアルバムにもセッションで参加。おそらくそれが縁での提供だろう。リビー・タイタスもウッドストック周辺のsswで、一部で有名なCBS盤(後述)以前に1枚LPあり。さらにカズがpianoを弾く5曲の幻のデモのうち3曲が「ベアズヴィル・ボックス・セット」に収録されている。
Give It Up

翌年リンダ・ロンシュタットアサイラム移籍第1弾「Don't Cry Now」でもこの曲はカヴァーされている。これで一気に知られるようになった感があるものの、リンダの旨さたっぷりの歌い方がこの曲に合っているかは別の問題の気もする。それだけではなくなぜかこのLP、個人的にあまりひっかかってこないのだ(次の「Heart Like A Wheel」は大好き)。
Don't Cry Now

74年には、リタ・クーリッジが未CD化の「Fall Into Spring」でカヴァー。LAスワンプの歌姫として登場した頃からだんだん角が取れ、洗練に向かいつつある過度期の1枚で、猫を抱いたリタのジャケットは素晴らしいけど、中身はちとつらい。現在聞けるのは2枚組のアンソロジー「Delta Lady」。
デルタ・レディ

同じ74年にはマザーアースのシンガーだったトレイシー・ネルソンがファーストソロ「Tracy Nelson」(アトランティック)でカヴァー。こちらはやや毛色の違うarrでよりブルージーなイメージ。クライディー・キング以下ゴスペル風のクワイアも効果的。余談ながら先のリタが猫なら、トレイシーは犬と仲良くジャケットに収まっている(裏ジャケだけど)。prodはボブ・ジョンストン。
Tracy Nelson

で肝心の作者2人はこの歌を歌わなかったのか?というとこれが微妙なところ。
カズはリリースした素晴らしい2枚のソロではとりあげず、76年にクレイグ・フラー、ダグ・ユール、スティーヴ・カッツと結成した”マイナーリーグのスーパーグループ”(と評したのはローリング・ストーン誌だったか)、アメリカン・フライヤーの1枚目でようやくとりあげている。但し歌ってるのはカズではなく、フラーのようだ。
American Flyer: Spirit of a Woman

一方タイタスはザ・バンドのリヴォン・ヘルムの恋人として知られていた程度で、昔も今もその存在は謎に包まれていたが、77年にフィル・ラモーンポール・サイモン、ロビー・ロバートソン、カーリー・サイモンのprodで、CBSより「Libby Titus」でカムバック。伝説的な女性sswの復活として、CBS側もかなりプッシュしたが内容は趣味的なもので、セールス的にももちろんパッとしなかった。ここにいくつかの新曲(アル・クーパー、カーリーらとの共作)にまじって、この曲がひっそりと収録されている。ジョン・トロペイ(g)、トニー・レヴィン(b)、リック・マロッタ(ds)、ドン・グロルニック(kb)らNYのスタジオミュージシャンが参加。貫禄はあるが好みではない。

追記でこれにも触れておかずにはいられない。98年に亡くなったニコレット・ラーソンを追悼するトリビュート・コンサート(演奏されてる曲は参加者のオリジナル中心で、ニコレットと直接関係ないのが趣旨と違って疑問。あとフィート、ドゥービー関係が一切加わってないのは何故?)のライヴが先日突然ライノからリリースされたけど、ここにボニーが歌いこの曲の最新(といっても10年近く前だが)のヴァージョンが収められている。コーラスはクロスビー&ナッシュ。
Tribute to Nicolette Larson: Lotta Love Concert