in-the#3

UK
■In The Dead Of Night / U.K.
憂国の四士」というすごい邦題のデビュー作が出たのが79年。「パンク〜ニュー・ウェイヴの嵐が吹き荒れ、プレスはかつてのビッグネームを全く無視していた当時の英国を憂いだ4人の歴然の勇者」というようなニュアンスを、期待感を込めてポリドールの担当者はつけたんだろう。それは痛いほどわかる。77年を境にハード・ロックプログレッシヴ・ロックへの扱いは急激に冷たくなり、日本の雑誌ですら扱いが減っていった。そこへ元後期クリムゾンのリズムセクションジョン・ウェットンとビル・ブラフォード)を中心としたヴェテランによる新バンドーあとの二人は気難しいがいろいろキャリアがある(しかも日本では名のみ知られたようなバンド)テクニシャンのgtr(アラン・ホールズワース)と若くアイドル性のあるkb(エディー・ジョブソン)という異色の組み合わせは、否が応でもプッシュせざるをえない。当時高1だった僕も、それまでクリムゾンは代表曲しか知らなかったけど、記事を読んで妙にコーフンした覚えがある。で、実際耳にするとジョン・ウェットンのナルシスティックな歌い方と、syn系のkbの使い方がどうもダメだった。噂のホールズワースもあまり弾いてるという感じはなく、ちょっと違う印象だった(その後ブラフォードとホールズワースは脱退、ブラフォードの「One Of A Kind」にも参加してるが、こちらはなかなか好きな1枚)。ジョン・ウェットンという人は、モーグル・スラッシュ、ファミリー、クリムゾン、ユーライア・ヒープロキシー・ミュージックと英ロックの裏どころから表舞台へ成り上がってきた人で、この後のエイジアといい、時流に乗って自らの音楽をビジネスと割り切ることの出来る才能があることは確か。この後テリー・ボジオ(ds)を加えトリオとなったU.K.が日本でも結構な人気を博すのは、熱心なファンサーヴィスなど、ウェットンの戦略によるところも大きいだろう。あとエディー・ジョブソンのルックスとね。プログレッシヴとは進化する意味だが、いつしかある種のスタイルにこだわり進化することを止めてしまった音楽だ。U.K.の音楽はそのある種のスタイルの中において「進化」しようともがいた結果なのかもしれないが、本当の「進化」はこの当時プログレというジャンルを超えたところ(例えばオルタナティヴ派やザッパなど)で始まっており、多くのファンは「進化」など全く望んでなかったような気もする。この年、僕はハットフィールド&ザ・ノースの1枚目をはじめて聞いて、普段「プログレ」の中にはあまり挙がってこないこのカンタベリー出身の人たちに眼を向けるようになったのだ。後になってホールズワースのキャリア(イギンボトム、テンペストソフト・マシーン、ゴング、ジャン・リュック・ポンティー、ニュー・ライフタイム、ブラフォード、ソロ)を見てゆくと、その名前を日本のファンに知らしめたU.K.の音楽だけが異色でこれだけジャズ色が薄い。
      おまけ
こういう動画が残ってたことにびっくり。Liveだが、やはり華となってるのはジョブソン。ホールズワースは地味だねえ。邦題は"闇の住人"だった記憶。