架空ライナーノーツ


■All My Love's Laughter / Jennifer
masatoさんからレスも付いてましたし、思わず書いてしまいました。架空ライナーノーツ。

01年にMusic Forceから出た「The Well」以来新作がとだえてるジェニファー・ウォーンズですが、72年にRepriseからの3枚目「Jennifer」の待望久しいCD化となりました。04年に豪Ravenからの68年から83年までの20曲を収めたコンピレーション「Love Lift Us Up」の中に5曲収録されてはいましたが、完全な形で出るのはもちろん世界初になります。
私事で恐縮ですが、今から15年位前、西新宿にあったDisk Ageという店で購入。カット・アウトでしたが、3000円くらいだったと思います。エサ箱でこのジャケットを見つけた時、思わず心拍数があがったことを覚えています。

47年シアトル出身で、10代の頃からフォーキーなデュオを組んでカリフォルニアのアマチュア・シーンでは知る人ぞ知る存在だったといいます。68年にParrotと契約して2枚のLPをリリース。ロック・ミュージカル「Hair」のキャストを務めたり、TVのディック・スマザー・ショーでドノヴァンやジョン・ハートフォードらと共演した経験もあります。その流れでジャック・ニッチェの紹介でRepriseと契約。元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドジョン・ケイルのプロデュースでリリースされたのが、この「Jennifer」になります。
録音はカリフォルニア、グレンデイルのホィットニー・スタジオで、ウィルトン・フェルダー(b/クルセイダーズ)、リッチー・ヘイワード(ds/リトル・フィート)、ラス・カンケル(ds)、スプーナー・オールダム(kb)、ロン・エリオット(g/パン)、ミルト・ホランド(perc)、ジャクソン・ブラウン(g)、ジム・ホーン(sax)、スニーキー・ピート・クレイナウ(steel)らが参加しています。
過去の2枚のアルバムでも他人のカヴァーを中心とした選曲がされていましたが、ここではケイルとジェニファーが選曲に苦心したあとが見られます。もちろんジェニファーの歌声がこのアルバムの魅力ですが、この選曲も魅力のひとつです。それでは順番に聞いていきましょう。

(1)In The Morning
ある世代にとっては、映画「小さな恋のメロディー」のオープニング曲としてインプットされているビージーズの曲ですが、ジェニファーのヴァージョンはゆったりとしたカントリー・ロック風のアレンジで、ac-g、conga、pianoの一体となった演奏が素晴らしい。作者はバリー・ギブ。

(2)P F Sloan
ジミー・ウエッブ作で、後期アソシエーションがとりあげたこの曲は、LAのセント・ポール教会のボーイズ・クワイアをフィーチャーしたもので、子供たちのコーラスが清々しい印象を受けます。タイトルのスローンは、60's末のフォークロック時代にDunhill周辺で活躍したsswのことで、ウエッブらしいちょっと皮肉な歌です。

(3)Empty Bottles
プロデューサーのケイルの書き下ろし。ケイルという人はウェールズ出身で、この人選は僕には最初意外と思えたのですが、後にチャンキー、ノヴィ&アーニー(ローレン・ウッドがいた)のプロデュースを手がけたことを知って妙に納得。

(4)Sand And Foam
ドノヴァンの2枚目「Mellow Yellow」('67)に収められていたナンバーをカヴァー。繊細なgは、ケイルが弾いてるのでしょうか?途中やや大げさな感じになるのも意外な展開です。妙に映像的な曲調です。ちなみにディック・スマザー・ショーでドノヴァンとジェニファーは共演済みです。

(5)Be My Friend
このアルバムの選曲の意外さに同時代のブリティッシュ・ロックを取り上げていることがあります。フリーの4枚目「Highway」に入ってたナンバーをストリングスとコーラスをバックにしたアレンジで構成。ソウルフルな線を狙ったようですが、個人的にはあまり成功してるとは思えません。でも野心的ではあります。ここまでがA面。

(6)Needle And Thread
ガンストン&ダヴという作者のことはわかりませんが、ジェニファーの独特の声質を生かした好トラックで、妙にソウルフルな印象を受けます。"Be My Friend"同様ストリングスを大きくフィーチャーしています。

(7)Last Song
唯一のオリジナルがこの曲。元々sswというタイプではないのですが、シンプルなフォークロックに仕上がっています。この曲もそうですがジェニファーの裏声になる瞬間には、ゾクゾクさせられます。クレジットではジェニファー・ウォーレンとなってますが、これは同名の女優がいたこともあって、姓なしのジェニファー、更には改名してのウォーンズ姓を名乗るようになりました。

(8)All My Love's Laughter
再びジム・ウェッブの作品を取り上げてのもの。派手ではないけど、このアルバムを代表するナンバー。芸術的ともいえる歌詞世界は、ウェッブならではのものです。作者のヴァージョンは「And So On」から。アート・ガーファンクルのカヴァーもあります。

(9)These Days
グレッグ・オールマン、イアン・マシューズ、ゲイター・クリークなどに取り上げられた初期のジャクソン・ブラウンの代表曲。これに限っては先の3つカヴァーが素晴らしく、やや不利です。のorganはオールダムでしょうか?

(10)Magdalene(My Regal Zonophone)
プロコル・ハルムの2枚目「Shine On Brightly」に収められたバラードが最後に歌われます。湿った曇り空を思わせる、ゲイリー・ブルッカーの歌声も絶品でしたが、ここでの清楚なジェニファーの歌声もまた素晴らしく、この曲に新たな生命を吹き込むようです。キース・リードとゲイリー・ブルッカー作品。
ジェニファーの情報は、オフィシャルサイト、http://www.jenniferwarnes.com/ に詳しいです。レアな写真も豊富にあります。