don't#3

Put It In Your Ear
■I Don't Wanna Go / Paul Butterfield
ポール・バターフィールドと言う人は筋金入りのシカゴブルーズ愛好家でありながら、独自のブルーズ感を持った人で、ブルーズ・バンドにホーンセクションを導入したり、バターフィールド・ブルーズ・バンド末期には吹くことよりも歌うことに重点を置いていた部分がある。解散後結成したベター・デイズは今もってザ・バンドと並ぶアメリカン・ミュージック・バンドの名にふさわしい。実力あるメンバーに恵まれつつ、2枚で解散。シカゴとニュー・オーリンズがつながるクロスオーヴァー感覚は、当時かなり新しかったろう。75年の初ソロ「Put It In Your Ear」は当時LPでは日本盤は出ず、ポスターの耳から突き出た指が印象的なジャケットだった。BBB出身のデイヴィッド・サンボーン(as)が大活躍する、75年ではこれまた早すぎる、歌ありのクロスオーヴァーフュージョンで、バックボーンにあるのはR&Bであり、ニュー・オーリンズだろう。ジョン・ホルブルック(kb)、ニック・ジェイムソン(g)といった、ベアズヴィルの若いミュージシャンや、これまた旧知のリヴォン・ヘルム(ds)、ガース・ハドスン(kb)、更には当時スタッフとして売り出し中のゴードン・エドワーズ(b)、エリック・ゲイル(g)らも参加している。トゥーツ・シールマンス風の"My Song"、ビッグバンド風のバックにむせび泣くハーモニカが素晴らしい"The Breadline"、スタンダード風の歌もの"Watch'em Tell A Lie"、ベアズヴィルらしさ満点の"Here I Go Again"など聞き物が多いが、初めて聞いたときは、もっとアーシーなものを期待してたので大いにずっこけた覚え。この路線は以後も続くが、次作「North South」ではほとんど吹かなくなってしまって残念だった。
"I Don't Wanna Go"は昔ならもっとブルージーなスタイルだったろうが、75年当時のソウルっぽいarrが逆に斬新。手持ちのCD(独Repertoire)はノー・クレジットで非常に不親切だ。