#11ファイアフォール

Luna Sea
Luna Sea / Firefall
全く失礼な話なんだけど、70's後半から80'sにかけてリアルタイムに聞いていたアメリカン・ロックは今となっては、「代用品」みたいだ思ってた。つまり70's前半の70's型ロック黄金時代の作品をなかなかちゃんと聞く機会がなかったので、それらの「代用品」。特に当時結構熱心に聞いた当時のウエストコーストものは、やはり70's前半のものの方が素晴らしく、中古盤を買うようになって集めだす頃には、70's後半のものは次第に聞かなくなっていったのだ。ファイアフォールはデビュー当時はマナサスを越えた、とか言われたけど、今聞くとそういう問題ではなかったのだ。まったく。
フライング・ブリトウズのリック・ロバーツ(g,vo)、ゼファーを経てグラム・パーソンズのツアー・バンドにいたジョック・バートリー(g)、バーズのマイケル・クラーク(ds〜ただしテクニック的に問題があってあまり叩いてないらしい)、ジョ・ジョ・ガンのマーク・アンデス(b)そしてラリー・バーネット(g,vo)5人組で、77年の2枚目「Luna Sea」から6人目のメンバーとしてkb,sax,fl,harpをこなすデイヴィッド・ミューズが参加。ポップなメロディアスな曲を書くロバーツと泥くさいブルージーな曲を書くバーネットの二人の個性が際立った傑作で今聞くと、ポップにまとまりすぎてるところもあるけど、悪くない。昔からロバーツの書く曲は、ちょっとなあと思っていたが、それは今回聞いてもかわらない。"Just Remember I Love You"、"So Long"といったヒット曲はストリングスも入って大甘。けれどこういった曲のヒットのおかげで、バンドも順調だったわけでフクザツな気分。バーネットの書く曲にこそ、マナサス的なグルーヴを感じ取れるのは、ロバーツがスティルスの熱心なフォロワーだった("It Doesn't Matter"はスティルスヒルマンとの共作だった)事を考えると面白い。ベストトラックはメンフィス・ホーンズ、おなじみのヴェネッタ・フィールズ、クライディー・キング、シャーリー・マシューズのコーラスをフィーチャーした"Head On Home"で、ミューズのflソロ、ジョー・ララのpercが炸裂するマナサス指数の高いもの。そしてラストの"Even Steven"では、スティーヴン・スティルスのことを思い出さないわけにはいかない。
ライノから出たCDには幻の3枚目「Toropical Nights」からのナンバー4曲がボーナストラックとして収録されている。
結局ファイアフォールは5枚目でAORに大きくシフトしてしまうのだけど少なくとも初期の3枚には、古きよき豪快なアメリカンロックに通じるものは少なからずあった