#3人間椅子(江戸川乱歩)

人間椅子 (江戸川乱歩文庫)
江戸川乱歩というと、日本の推理小説(というよりも探偵小説だね、この場合は)界黎明期の巨人であり、戦前から海外の作品を紹介した人なんだけど、その作風は時代柄、ストレートな推理物というよりは、通俗小説的な(特に長編)色合いも強かった。また単に推理小説のジャンルにとどまらず、怪奇幻想の分野でもすぐれた作品を残している。
人間椅子」は同名のイカ天バンドにも名前が引用されたけど、途中までは不気味なタッチで、ぐいぐい読ませ、最後にあっと落とす、短編ならではの味わい。これはネタばれになるんで多くは語るまい。

女流作家として活躍する佳子のもとには、しばしば素人による原稿が送られてくるのだが、今朝届いた「奥様…」で始まる奇妙なものは、読みだすうちに、なんとなく異常な、妙に気味の悪いものを予感させたが、どうしてもやめられないのだった。それは椅子職人による不気味な戦慄する告白だったのだ…

大正14年に発表された怪奇幻想分野での代表的作品。この種のものをまとめたちくま文庫の「江戸川乱歩全短編3・怪奇幻想」が手っ取り早いが、もっと少なめのものでは、新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」がいい。
江戸川乱歩全短篇〈3〉怪奇幻想 (ちくま文庫) 
最近では光文社からのシリーズも出てるが、少年時代ポプラ社からでた少年探偵団シリーズにはお世話になった。