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小さな恋のメロディ ― オリジナル・サウンドトラック
■In The Morning / Bee Gees
ファルセットを多用しない時代のビージーズの代表作というと67年69年の「Odessa」*1あたりになるのでしょうか?世界的には無名*2ながら日本で大ヒットした映画「小さな恋のメロディ」('71英、ワリス・フセイン監督)では、ビージーズの作品が5曲使われていました。ある世代にとっては琴線を震わせるナンバーの1つが、この"In The Morning"です。

小学生のカップルの結婚を描いた、センチメンタルな映画の大ヒット(70's半ばまでヘラルド映画が何度もリヴァイヴァル上映させ、その後TV放送も何度もされました。75年に中一だった僕はこのTV放送世代で、アラン・パーカーによる原作が文庫化(ハヤカワ文庫NV)されたのも75年頃と記憶しています)に伴い、日本でのビージーズの人気もさらに上昇したようです。
ここで使われた5曲の大半は前述の「Odessa」からのものですが、"In The Morning"はオリジナル・アルバム未収録(「Best Of Vol.2」には収録)です。
僕はずっとこの映画の為の未発表曲と思っていたのですが、70年に出たルルの渡米第1作で、マッスル・ショールズで録音された(デュアン・オールマンも参加)「New Routes」(Atco)に、この曲は取り上げられています。当時ルルはモーリス・ギブ夫人だったこともあったのでしょう。ここでは2曲、次の「Melody Fair」ではズバリ、タイトル曲をカヴァーしています。ですので、オリジナルはルルのヴァージョンではないでしょうか?ちなみにこのルルのAtco時代の音源は去年RhinoからCD化されました(労作です)。
Atco Sessions
映画ではオープニングの聖歌隊のシーンで使われる美しいメロディーの「ソフトロック」*3
映画の方は、マーク・レスタージャック・ワイルド、そしてトレイシー・ハイドが主演。とりわけメロディを演じたトレイシーの人気がティーンを中心に爆発し、おそらくはこれ1本のつもりだったティーン女優が、東洋の島国で熱狂的な支持を受けたことによる戸惑い、困惑みたいなものが、今となってはよくわかります。70's後半の「スクリーン」誌、「ロードショー」誌の人気投票では常に上位にランクされていた記憶があります。あまりの人気に目をつけた映画会社が日本で次の作品の企画を立てたことがあったそうですが、本人はまったくその気のなかった様なので実現しませんでしたが、そうは言えない(書けない)ので雑誌には常に次回作準備中という記載もあった気がします。
僕自身もう何度も見てますけど、さすがに10代の頃感じた新鮮な気持ちはないですが、楽器のアンサンブルのシーンには今もせつなくなります。むしろ今の視点で見ると、英国の歴然とした階級社会の格差(金持ちとか貧乏人とかそういうレベルではなく)が浮き彫りになりますね。学校サボって二人が行く遊園地は、モッズの聖地、ブライトンです。あくまでも日本でのヒット曲なので、ビージーズのキャリアとしてはさほど重要でない曲のはずですが、ジェニファー・ウォーンズがジェニファー名義で72年に出した傑作「Jennifer」でもとりあげています。

 これは71年のライヴ
さて、バリー、ロビン、モーリスのギブ3兄弟から成るビージーズはもともとオーストラリアで活動していたグループですが、67年の"New York Minning Disaster 1941"のヒットで注目されました(#14US/#12UK)。60'sのヒット曲はどれもソフトなコーラスが売り物で、個人的にはメロディー的に面白みに欠けるものも多いのですが、68年の”I've Gotta Get A Message To You"あたりからメロディーも充実して、70's初めの最初のピークとなるのですが、ちょうどこの映画が日本で大ヒットしてた頃から英米で人気に陰りが見え始め、低迷期を経て、76年75年の「Main Course」のディスコ路線で見事にカムバックを図ります。

*1:ジャケットがヴェルヴェット地でした。こういうパターンはドン・ニックスの「Living By The Days」もそうでした

*2:最近はyou tubeの動画でも中国系の人がこの映画の動画を投稿してたから一概にそうとも言えないですけど

*3:そうVanda誌がソフトロックと持ち上げるまで、ソフトロックと言えばビージーズを思い出したものでした