mornig#3
■Fresh As A Sweet Sunday Morning / Bert Jansch
実はペンタングルもその中心人物だった、バート・ヤンシュにも僕は詳しいわけでなく、むしろ知らないことの方が圧倒的に多かったのですが、セレクト仲間のとしひこさんに聞かせていただいた、バート・ヤンシュの「LA Turnaround」は実にすばらしい出来でした。大半の作品がCD化されているヤンシュですが、英Charsimaに残した2枚は現在もCD化されておらず、74年のこの作品は結構レアな1枚といいます。
からイギリスのアメリカ*1的なものかなあ、と何となく想像していましたが、当たらずも遠からずといった感じです。モンキーズ・マニアのとしひこさんは、マイク・ネスミス方面からのアプローチでしょうが、僕としては元モンキーズというよりもカントリー・ロッカーのネスミスがプロデュースした英国人というと、Elektra時代のイアン・マシューズ*2を思い出します。
ネスミスが何故ヤンシュを手がけたのか、そこらへんの経緯は不勉強につきわかりませんが、ネスミスのファースト・ナショナル・バンド出身でお抱えのsteel奏者、レッド・ローズが加わった曲は、ユルユルのカントリーロックテイストが英国古来のメロディに乗っかってなんとも不可思議な世界をかもし出します。この辺は英国人steel奏者、BJコール*3が参加した英国ロック作品に、哀愁とか郷愁を感じる方なら文句なしにひれ伏してしまうようなもので、オープニングの"Fresh As A Sweet Sunday Morning"のイントロが流れ始めた時の、いてもたってもいられない感じは、steel-gファンなら分かってもらえるでしょう。
バックには、クラウス・ヴーアマン(b)、ダニー・レイン(ds)、バイロン・バーライン(fdl,mand)、ネスミス(g)らが参加しています。"Open Up The Watergate"には、ジェシ・デイヴィスが参加*4。ちょうどジーン・クラークの「White Light」でのプレイをほうふつさせる泥くさいスライドを聞かせます。名演です。"Of Love And Lullaby"は、イワン・マッコール*5の"The First Time Ever I Saw Your Face"を思わせる。としひこさんがブログにてベストトラックと評した"There Comes A Time"は、ゆったりとしたナンバーで、控えめながらsteelのシャワーとでもいうべき、ローズのプレイは至福の瞬間です。
2曲のインストはペンタングルのダニー・トンプソンprodのパリ録音といいます。元FBBのバーラインが加わった"Cluck Old Hen"はどことなく暗めな、英国のバッファロー・スプリングフィールド的なナンバーですが、この「やや暗めな」という部分がキーワードでしょうねえ。
さて、バート・ヤンシュといえば60'sに英国のディランとか言われた一人ですが、達者なgプレイは、よく言われてるようにレッド・ゼッペリンのジミー・ペイジに影響を与えています。当然ながら僕がヤンシュの名前を知ったのは、高校の頃、渋谷陽一氏の番組でかかったペンタングルのナンバーでしたが、例によって渋谷氏は突っ込んで解説されない*6うえに、ゼッペリンへの興味も薄かったのでそのままでした。英国フォークといっても真摯なトラッドの世界はどうも苦手で、オリジナルを歌うフォーキーな女性ssw(ブリジット・セント・ジョン、シエラ・マクドナルド、ヴァシュティ・ブニヤンetc)を好んで聞いていた僕をねじ伏せるような魅力がこのアルバムにはあります。
*1:提唱者はロック・ダイヴィング・マガジン誌のかものはしお氏でしょうか。アメリカ的な風景への憧憬を音楽的にあらわしたイギリス人アーティストもしくはその音楽、を指します。英国産カントリー・ロック、スワンプ・ロックの大半はこれにあたります。アメリカのそういった音楽に憧れて演奏してはいますが、英国人としてのアイデンティティーから、カラッとした明るさよりも湿った土のにおいが強調される事が多いです
*2:画像はネスミスprodの「Valley Hi」
*3:イギリスのアメリカと呼ばれる音楽で聞かれるsteel-gの大半はこの人によるもの。イギリスの駒沢裕城(逆か)。元コチーズのメンバーでした
*4:この人の参加もこのLPの価値と値段を高めている感じです
*5:娘はスティーヴ・リリーホワイト夫人だったsswのカーティ・マッコール
*6:理由はお分かりでしょうが