hollywood#3

フィフス・アヴェニュー・バンド

フィフス・アヴェニュー・バンド

144■In Hollywood / Fifth Avenue Band
フィフス・アヴェニュー・バンド及びピーター・ゴールウェイというと本国以上に日本で根強い人気があります。77年頃にワーナーからロック名盤の1枚として日本盤LPが出て以来、口コミでその音楽性の素晴らしさが語り継がれ今に至っています。CDも90年に世界に先駆けて日本でリリースされ、同時にレア・グルーヴと言われる過去の音源再評価につながり、また名盤探検隊によるルーツ・ロックの新たな解釈による再評価へとつながっています。
と、書きましたが、79年頃に初めてこのアルバムを聞いた時、ピンとこなかったのは事実です。当時はウエストコースト音楽が巷に溢れ、ポップなメロディーのロックに親しみを感じていたので、一見取っ付きにくそうな東海岸のグルーヴィーなロックにはイマイチ反応が鈍かったのです。さて69年にRepriseからリリースされたこのファーストは、当時スプーンフルの再来とか期待されつつ、セールス的にはサッパリでした。ゴールウェイとジョン・リンドの書くナンバーは、黒人音楽、ラテン、ブラジル、フォーク、カントリー、ジャズなど様々な要素が混ざり合っています。NY派の彼らが、LAの事を歌った珍しい"In Hollywood"は、歌詞が村上春樹的で面白いです。アルバムの中では目立たない1曲ですが、映画的な表情を見せるナンバーでもあります。これからリンド作のベストトラックの"Angel"へつながる最後の盛り上がりはなかなかのもので、hornセクションをフィーチャーしてパワフルに迫る(しかも複雑なコーラスを交え)姿は、見たかった気もします。日本での彼らの人気は、パイド・パイパー・ハウスやシュガー・ベイブの存在なくしてないでしょうが、そんな事を考えながらこれらの曲を聞くのは、やはり晴れた日曜の午後が最適です。