#4■黒く塗れ:宇江佐真理

黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)

黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)

宇江佐真理は"幻の声"('95)でオール讀物新人賞を取りデビュー。その"幻の声"は「髪結い伊佐次捕余話」シリーズの第1作で、現在もペースを落としつつ書き継がれる人気シリーズ。捕物余話とあるように捕物帳の部分よりも市井の人々の暮らしを描いた人情ものに近い。それでもシリーズ第5作「黒く塗れ」('03)の表題作は一風変わった怪異譚の近い捕物帳で、シリーズ異色の短編。作者はタイトルを矢沢永吉の曲名から取ったという。呪(まじな)いを使う町医者の話