same#2

南から来た男
■Never Be The Same / Christopher Cross
いわゆる「AOR」と「カリフォルニア・ロック」は重ならない、と言うのが持論だけど、もちろん例外もある。覆面シンガー(ソングライター)として登場したクリストファー・クロスの1枚目がそう。元々テキサス出身で泥くさい音をやってたらしいが、ワーナーから出たファースト「南から来た男」では、線の細いvo、洗練された音作りでずいぶん話題になった。女性的な歌声を持つこのシンガーは、どんな姿をしているのだろう?という下世話な興味もあったが、ジャケットに自身の姿を載せなかったのは正解。少なくとも日本では。マイケル・マクドナルドヴァレリー・カーター、ドン・ヘンリー、JD・サウザーニコレット・ラーソン、更にはジェイ・グレイドン、スティーヴ・ルカサーらの技を求めてクレジットを眺める行為が、マニアックな世界ではなくて、ごくフツーの光景となったのは、来たるべくAORのブーム(というか「なんとなくクリスタル」ブーム)のおかげか。ただしカリフォルニア・ロックとの蜜月というか、「魔法」はこのファーストのみで、セカンド以降は、黒人音楽の都会的な消化という観点にのっとったスタイリッシュなAORへと移行する。
このLPが出たのは79年で、80年の初来日を僕は市民会館で見てるけど、半数以上が魅力的な新曲だった。あの一連の曲は、セカンドに廻されたんだろうが、arrが変わってて(オシャレになっていて)がっかり。確かヤマハがやってた「世界歌謡祭」にエントリーされたんだっけ。
豪華ゲストが入らない、自身のバンド(アンディー・サルモン(b)、トミー・テイラー(ds)、ロブ・ミュラー(kb))をバックにした"Never Be The Same"が実はベストトラックだったりする。この爽やかさは尋常ではない。

ずいぶん最近のライヴ('98)