queen#2

リトル・クィーン
■Little Queen / Heart
ハートの日本デビューは77年の2枚目「Little Queen」でした。元々はカナダのMushroomというマイナー・レーベルから「Dreamboat Annie」を大ヒット(全米#9)させていたのですが、日本では契約する会社がなく、東芝からファーストが出たのはこのあとになります。ローカルなマイナー・レーベルでデビューしたバンドが、より全米的な人気を得るためにメジャーから同じアルバムをリリースし再デビューというのは、60'sによくありました(バッキンガムスとか)が、CBS傘下のPortraitがいささか強引な手口で、Mushroomからバンドを引き抜いた関係で、バンドとPortraitはMushroomから訴えられる羽目になり、結局は3枚目の「Magazine」はMushroomから出すという条件で収まったと聞いています。
西海岸はシアトル出身の5人組で、中心となるのはアン(vo)とナンシー(g,fl,vo)のウィルソン姉妹です。この美貌とアンバランスな激しいステージが話題となり、日本では2人の女性をフィーチャーしたバンドとして、フリートウッド・マックとよく比較されましたが、ハートの方がよりハードロック的でした。

「Little Queen」はジャケットのムードから中世の森をイメージさせ、メンバーはロビン・フッドの時代の狩人のようなコスチュームをまとっています。今なら大笑いなのですが、当時はファンタジックなものとされていたのがおかしいです。それでも1曲目の音の詰まったドライヴするハードロック"Barracuda"を聞けば、思わず声を上げざるを得ません。僕はこの曲をNHK-FMの「リクエスト・コーナー」で知って(まだハードロック少年でした)すぐ好きになりました。

タイトル曲の"Little Queen"は今聴くと妙に重いファンク的なハードロックで、メンバー全員の共作になるものです。当時からレッド・ゼッペリンをアイドルに挙げていただけあって、この重さも納得です。上の動画は、78年のオンタリオ・モータースピードウェイで行われたCalifornia Jam?でのライヴでダブルネックを抱えたロジャー・フィッシャー(g)の姿からして、ゼッペリンが重なります。
それでもハードロック好きでありながらそれ以上にメロディアスなソフトな曲も好きだった僕は、キャッチーなロックンロール"Kick It Out"、"Say Hello"以外はポップなものが少なくその辺はやや不満でした。ナンシーのharmonicaの入ったブルージーな"Treat Me Well"は、当時は本格的なブルーズに聞こえたものです。