you#3

Stormbringer
■You Can't Do It Right / Deep Purple
一部の好事家を除いて全く評価が低い3期パープルとしては2枚目にあたる74年作がこの「Stormbringer」。一般的に言われてることは、リッチー・ブラックモア(g)がデイヴィッド・カヴァーデイル(vo)とグレン・ヒューズ(b,vo)のブラック志向についてゆけなくなり、音楽的対立があった。ハードロック的なナンバーがタイトル曲と"Lady Double Dealer"くらいしかなく、大半のハードロック・ファンには納得いかない内容だったことは確か。06年に紙ジャケで再発された際の追記されたライナーも、あくまでもハードロック・ファンとしての意見で、今日的な視点が見られない。どちらかというと「アメリカ進出の為、当時の流行だったソウル〜ファンクをイギリスのハードロック・バンドが消化しようとして試行錯誤した1枚」だろう。
思えば74年は激動の年で、前年末に新体制となったパープルは早々に「Burn」の録音をこなし、ツアー。並行してジョン・ロードはトニー・アシュトンとの共作LPやライヴ、ソロ「Windows」をリリース、8月には「Stormbringer」の録音があり、ツアー。またロジャー・グローヴァーのソロにもメンバーは参加している。前作以上に目立つのは、ロードのsyn、clavinetといったorgan,piano以外のkb類の導入ぶりで、その多彩ぶりが楽曲をハードロックから遠ざけていて、僕としては見事に成功していると感じる。ブラックモアもそれにあわせるかのように、リズム・カッティングに徹した"You Can't Do It Right"などは、ハードロック・ファンには面白くもなんともない曲だろうけど、重いヒューズのbとロードのclv,synが織り成す独特の世界にブラックモアのgも一役かっているのだ。「Who Do You Think We Are」でもそうだったが、"Highball Shooter"や"Stormbringer"、"Holy Man"では、一部スライドを使ったりして、アメリカナイズされた音に挑戦していて、やる気ないとか言われつつちゃんと仕事はしている。もちろんハードロック・ファンにはつまらないだろうが。この「Stormbringer」なくして次に「Come Taste The Band」はなかったはず。むしろ過酷なスケジュールを強要したマネージメント側に非があるといえばあるだろう。